約束~悲しみの先にある景色~
うっすらと見える私の腕は、内出血や様々な時期に出来た色んな形の痣や傷だらけ。



私は今、生きとし生けるどんな生き物よりも、どんな人間よりも、酷い扱いをされている。



『ほらほら、痛いだろう?これが俺からのしつけだぞ、俺は、お前の事がだーいすきだから仕方なーくやってるんだよ!…今度は言う事を聞くか?おい!?』


身の毛もよだつ猫撫で声を出した父親は、次の瞬間、ありったけの力で私を踏み付けた。


『!…痛いっ、!……止めてっ……』


ぐっ、と、聞いた事も無い声が自分の口から漏れる。


胃が踏みつけられ、心臓が異常な程のスピードで血液を送り出し、その割には身体の何処にも力が入らない。


『あぁ!?』


仰向けのまま何とか喘ぐ様にして呼吸をしている私に、そいつは獣の様な血走った目を向けてきて。


『やだああぁっっ!』


いつの間にか手にしていた椅子を、私に向かって投げつけてきた。




「嫌っっ!やだやだぁっ!」


自分の大声に驚いた私は、はっと目を開けた。


暖房のお陰で暖かくなった自分の部屋、寝る直前までつけっぱなしにしていた電気もそのままだった。


(あっ……夢…)


あの出来事は、現実と勘違いしてしまう程実にリアルだった。
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