約束~悲しみの先にある景色~
まるで、俺を誰かと勘違いしている様で、俺が声を掛けた途端に涙を流して、身体を震えさせてその場に崩れ落ちてしまって。


何があったのだろう、と、干渉してはいけないのかもしれないけれど心配になってしまった。



(…めっちゃ、濡れてる……)


そんな事を考えながら、彼女をベッドに寝かせて改めて感じた違和感。


瀬奈ちゃんの背中が、大量の汗で濡れていたのだ。


(…まあ、そういう事もあるよね)


勝手にそう決めつけた俺が気を利かせて部屋の電気を消して、欠伸をしながら瀬奈ちゃんの部屋を出ようとした時。


「や、だっ……」


眠っているはずの瀬奈ちゃんの口から、ある台詞がほとばしった。


「えっ?」


瀬奈ちゃんのベッドに背を向けていた俺は、その姿勢のまま固まった。


(今、何て…)


「嫌、……止め…て……」


瀬奈ちゃんの声がもう一度聞こえ、俺がゆっくりと後ろを振り向くと。


「や……やだ、止めてっ……!」


俺が掛けた毛布を剥ぎ取り、眠っているのに顔を歪め、目尻から涙を流し。


明らかにうなされている瀬奈ちゃんの姿が、そこにはあった。


「瀬奈ちゃん!?」


(どうしたの!?)


慌てて、俺は再び彼女の元へ舞い戻って。


真っ暗闇だった空間に豆電球をつけ、その少しの明かりの中で、俺は瀬奈ちゃんの片手を握った。
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