約束~悲しみの先にある景色~
そして、特に話す内容もない私達の間には、何とも言えない空気が流れていて。


私はストーブの目の前の床に座って暖をとり、楽人さんはベッドに座ったままスマホを弄っている。



「あ、瀬奈ちゃん。そういえばマカロンをトユンから1つ貰って食べたよー。美味しかった、ありがとね」


不意に、楽人さんが私に話し掛けてきた。


「あ、バレンタインの…!いえいえ、喜んで貰えて良かったです」


私は笑顔を作って、手を顔の前で軽くひらひらと振った。


「あれ何処で買ったの?今度買いに行きたいんだけど」


「えっと、新南山駅の『ママの手料理』ってお店で…………」


そっかあ、と頷いている彼は、何となく何かの話題を言いたそうで、その話題を切り出すタイミングを見計らっている気がした。



そして、私達が世間話を少しした後。


「あのさ…、トユンから聞いたんだけど、2人は血が繋がってないんだよね?」


恐る恐る、といった風に、彼はきちんと身体をこちらに向けながら確認してきた。


「はい」


私が頷くと、


「そうだよね…。あのさ、これからトユンが何かを相談してきたり打ち明けたりしてきたら、その相談に乗ってあげて、トユンを義兄としてちゃんと受け入れてあげて欲しいんだ。…んー何て言うか……、トユンもトユンなりに頑張ってるから、瀬奈ちゃんもトユンを信じてあげて、頼ってみて欲しい」
< 300 / 329 >

この作品をシェア

pagetop