約束~悲しみの先にある景色~
けれど、結局はお父さんの大声に怯えて涙を流してしまう私。


「謝れって言ってんだよ!おい!」


(謝らなきゃ、謝らないと…!)


私の肩に当てられた包丁が、少し動いた気がして。


「っ、…ごめんな、さ……」


必死で、私は声を絞り出した。


「あぁ?聞こえねえよ」


(もっと大きな声で謝らないと!)


「うぅ、ごめんなさいっ……」


涙と嗚咽が混じり、しゃくりあげながらも何とか声を大にする。


「俺を舐めてんのかよ!?聞こえねえって言ってんだろうが!」


お父さんの余りの迫力に、頬を幾重にも伝う涙を拭う事も出来ず、私は彼に聞こえる様に必死に謝罪の言葉を述べた。


(ごめんなさい、ごめんなさいっ…!)


「ごめっ…ごめんなさい……」


もう、今まで行ってきた私の行動のどれが悪かったのかも分からない。


ただ、泣きじゃくったせいでほぼ何も状況把握出来ていない私の脳が、今考えられる事は。


私が謝れば、きっとお父さんの機嫌は良くなるという事。


それが合っているかも間違っているかも、分からないのに。



「ふっ、」


そんな事を考えていると、急にお父さんが笑みを漏らした。


「…えっ……?」


突然の事に、たじろぐ私。


(もしかして、許して貰えた…?)


(これで、もう怒られない……?)
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