約束~悲しみの先にある景色~
だから、ここで何をするかなんて何も分からぬまま、私はお母さんに勢い良くシャワーのお湯を足にかけられた。


「ひっ!痛い痛い染みるっ!…、染みるよっ……」


最初こそお湯が傷口に染みたせいで大声を出したけれど、私はすぐに口を押さえて声を小さくした。


後ろに、お父さんの気配がしたから。


「全くもう…ほらじっとして、もう終わったよ。バスタオルで拭くからね」


その拭き方も雑なのか何なのか、私の傷口には妙にしみて。


「うっ、っ……痛いよっ…!」


大声を上げたら、少し態度が変わったとはいえお父さんに何か言われそうだから、私は下唇を血が出るほど噛み締めて足の痛みと闘った。



そのまま今度はお母さんに抱かれ、先程私が壁にへばりついていたあの場所へと移動されて。


(やっぱり痛いんだけど…)


座らされてもなお足は痛くて、だから動いてその痛みから逃れようとすると。


「分かったから、動かないで。ガラスの上を歩かなかったら、こんな事にならなかったの…ほら、動いちゃ駄目。包帯が巻けないでしょ」


そう、お母さんにたしなめられた。


お母さんにむんずと足を掴まれ、手早く包帯を巻かれてしまった私は動く事も出来ずに、しゅんとして頷いた。


「そうだよ、瀬奈。食器を割ったらきちんと報告しなさい。好奇心旺盛なのは良いけど、これは危ないんだから」
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