約束~悲しみの先にある景色~
抗議しようと口を開くと、血の味がした。


「お前はいつもいつもっ……俺の邪魔ばかりしてっ……言う事も聞かずに、反省もしないじゃねえか!」


言葉と言葉の間に殴られ、叩かれ、傍にあった椅子や文房具等、とにかくお父さんの目に付くものを投げつけられ、私の顔はその痛みと涙でぐちゃぐちゃになる。


「ごめんなさいっ…、治らなくて、ごめんなさいっ…!」


(どうして言われてるのに治らないの、私!)


(それに、私は何で反省もしないの?すぐ考えないで行動しない様に、気を付けないといけないのに!)


お父さんから怒号が浴びせられているのを聞きながら、私は自分自身にも怒号を浴びせる。


(何で、私はこんなに馬鹿なの!)


「馬鹿はとっとと失せろよ!」


(こんなんじゃ、誰も私の事を見てくれない!)


「所詮、お前みたいなカスの事なんて誰も見てねえよ!」


(皆いい子なのに、何で私は違うの!?)


「お前は存在しなくていいんだよ!」


(死にたくないなら、反省しないといけないのに!)


「腹立つな…さっさと死ねよゴミが!」



今日も今日とて、私の心には沢山の穴が空いていく。


その穴を、1mmでも小さくしてくれるのは。


『君はいい子だよ。馬鹿なんかじゃない』


『君の事を、ちゃんと見てくれてる人は居るんだ』
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