迷子のシンデレラ

「僕にはくれないのに、いつか僕以外に渡すのだろう?
 そのいつかの誰かを想わずに、今は僕のことだけを想っていて欲しい」

 ただ一度だけ、今宵限りの相手に嫉妬するなんてあり得ない。
 それさえも今を楽しむためのスパイスに過ぎないのだから。

 智美の首から鎖が外されて、テーブルへ置かれると改めてキスをする。

 一糸纏わぬ姿で顔だけには互いマスクを付けたまま。
 再び肌を重ね合わせる。

「僕を君に刻み込みたい。
 とても綺麗だ。
 可愛らしい声も反応も全て僕のものだ」

 甘い言葉も愛の囁きも。
 この場限りの戯言。

 分かっていること。
 それでも智美は彼の体に溺れていった。

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