迷子のシンデレラ
スプリングのよく効いた心地よいベッドで目を覚ます。
初めてだったことが分かってからの彼は優しかった。
優しくて、それなのに情熱的で、いつの間にか自分から彼を求めていた。
リビングから寝室へと移動してからも顔を見合わせてはキスをして、互いの体に触れた。
眠るのも惜しくて、いつ意識を手放したのか思い出せない。
寝室からも見えたパノラマの風景が今は薄っすらと白んで僅かに漏れる朝陽は彼の露わなままの裸体を照らす。
カーテンをすることも忘れ、開放的な空間で恥じらいも捨て、重なり合った昨晩。
昨日は夢中で求めあったのに彼の素顔は見ていない。
今もなお、マスクをしたまま寝息を立てる彼の滑らかでしなやかな体を目に映すと、余裕のなくなった彼のひどく扇情的な表情が思い出され、体が熱くなる。
逃げなきゃ。
魔法は解けてしまった。
お姫様のシャーロットはもうここにはいない。
彼を起こさないように注意して、ベッドから抜け出すと脱ぎ捨ててあるドレスや下着をかき集めた。
それらをどうにか身につけて、慌てて部屋を出る。
何もかもを考えたくなくて、兎にも角にもタクシーへと飛び乗った。