迷子のシンデレラ
そんな風に準備していた時はどうにか平気だと思っていたメイクや衣装にマスク。
実際に会場へ着いて周りの華やかな人達に囲まれると、どうにかなるだろうという安易な考えは簡単に吹き飛ばされてしまった。
どこからどう見ても自分が場違いな気がして、この先へ続く今以上に豪華絢爛であろうダンスホールへ足を踏み入れる勇気がなくなっていく。
「大丈夫。
みんな素性が分からないんだから無礼講みたいなものよ」
軽く笑う恵麻の隣で笑顔がひきつる。
「何事も経験だと思って楽しみましょう」
軽やかな足取りの恵麻の後に力なく続いた。
ずっと壁の花になっていればいいんだわ。
そう腹積もりをした智美は恵麻さえも全く想像し得なかった『経験』をすることになった。