迷子のシンデレラ

 連れてこられたのはお洒落なバー。

「前は智美ちゃんの行きたい場所だったから、今日は僕の。
 ね?」

 薄暗い照明が彼をより色っぽく見せる。
 指先を口元に当て、ウィンクされたせいで智美は簡単にノックアウトしそうだ。

 通された個室で繋がれていた手は離された。
 雰囲気のある場所にドギマギする。

 あの仮面舞踏会の時の強引な彼を思い出すと、再びそうなってしまうかもしれない甘く危険な想像が嫌でも頭を駆け巡る。

「何か、飲むかい?
 智美ちゃんはアルコール苦手だよね。
 ノンアルコールカクテルも可愛いのがあるから、好きなのを選びなよ」

 メニューを渡されて心あらずのまま視線を落とす。

 ジョージだと名乗ったあの日の葉山とは、やはりどこか違う。
 ここに連れてくるまでは強引ではあったけれど、座った位置も二回目に会う男女が座るのにちょうどいい距離を空けて紳士的な態度を保っている。

 きっとあの夜の彼なら隙間なく隣に座り、なんなら脚を絡めて……。
 いやらしい妄想が浮かんで、頭を左右に振った。

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