迷子のシンデレラ

「すまない。
 別の女性の話をされて気を悪くしたかな。
 けれど、君に似てるんだ。
 どこか儚げで捕まえておかないと居なくなってしまいそうで。」

 膝の上の手に彼の手が重ねられて顔を上げる。
 彼は真っ直ぐに智美を見つめてから、そっと視線を外した。

 重ねていた手も離された。
 そして嘲笑気味に言った。

「馬鹿だよね。
 君はどこの誰だか分かっていて、姿を消すことは到底無理なのに。」

 あの日のシャーロットは私なんです。
 そう言えたらどれだけいいか。

 けれど彼を瞳に映して、自分とは到底釣り合わない現実を目の当たりする。

 顔を背けている彼の気品溢れる姿。
 身につけているスーツや腕に覗く時計。
 どれもこれも智美には手が届かない世界。

 それにひきかえ、量販店で購入した安物のスカートにくたびれたパンプス。
 磨かれた革靴と並ぶと貧相で悲壮感さえ漂っている。

 魔法にはいつまでもかかり続けることはできない現実。

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