迷子のシンデレラ

 言いたいことを言って満足したのか、朝岡はおもむろに鞄からハンカチを取り出して葉山へ披露し始めた。

「このハンカチ。素敵でしょう?」

「あぁ。そうだね。」

 それは女性がよく持っていそうなブランドのハンカチ。
 彼女が持つことで品の良さがプラスされている。

「人からのプレゼントよ」

「へぇ。趣味のいい男だね」

「そうね。とても趣味がいいの。智美は」

「榎下さん?」

 彼女の前で智美ちゃんと呼ぼうものなら睨まれそうで、敢えて『榎下さん』と呼ぶと驚いた葉山に朝岡は満足げに頷いた。

「そうよ。
 もう。本当に、智美の話しか食いつかないんだから」

「そんなことないよ。
 素敵なハンカチだねっていう感想は心からの感想だよ」

「どうかしら」

「それで、ハンカチをどうしたのさ」

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