迷子のシンデレラ
「ふふっ。葉山さんが寝ぼけてる姿ってなんだかおかしいですね」
「寝ぼけてるかな」
「えぇ。だって声がいつもより、もにゃっとしてます」
彼女の表情が和らぐのなら三枚目キャラだろうと構わない。
けれど、今はいけない。
朝岡が言っていた通り、前よりも可愛らしい彼女を不意打ちで見せられた。
何より、自分で贈った色っぽい口紅が艶めいている唇から目が反らせない。
抗えない気持ちに突き動かされて智美の腕を取って自分の方へ引き寄せた。
小さな智美は葉山の腕の中にすっぽりと収まった。
「あ、あの……葉山さん?」
「……食べたい」
君を。
「え?」
声が裏返る智美を愛おしく思いながらも心とは裏腹の言葉を口から吐き出した。