迷子のシンデレラ

 決心が揺らぎそうになりながらも彼女を促して中へと入らせる。

 次は支払わせて欲しいと言われた彼女にどうすればいいのか考えあぐねた結果。

「あの、私のアパートで?」

「うん。智美ちゃんの手料理を食べてみたいなって」

「でも……それなら買い物に……」

「いいんだ。家にある何かで」

 押し問答の末、買い物には行きたいと言われ、行くことになった。
 どうしてか、智美だけが。

 一緒に行くと払ってしまいそうだからと、葉山は智美のアパートで留守番することになった。

「僕を信用し過ぎじゃないかな」

「葉山さんが何か盗んだりするとは思えないじゃないですか」

「まぁ、それはしないけど。
 下着とか……」

 口を滑らせてからしまったと思っても遅かった。
 真っ赤になる智美が「そんなこと葉山さんがするはずないって……」と男として喜んでいいのか分からない返しをした。

「うん、まぁ。しないけど」

 それでどうやって信じられるのか。
 智美は買い物へ行ってしまった。

 彼女のお人好し加減には心配になる。

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