迷子のシンデレラ

 玄関の開いた音に目を覚ます。
 また眠っていたようだ。

「あ、また寝てる……」

 小さな声がして、智美が帰ってきて自分を見つめていることが分かった。

「ふふっ。大きい体が小さく丸くなってる姿って可愛い」

 眠っていると思って好き勝手なことを言う智美に出来心で寝たフリをすることにした。
 どうやら智美は葉山がまだ眠っていると思っているらしい。

「綺麗な……顔だなぁ」

 しみじみ言われて照れ臭くてムズムズする。

 不意に頬へ柔らかな感触がした。

「うわー」

 照れた声を聞いて我慢ならなくて顔を上げた。

「え?」

 驚いたのか間抜けな声を上げる目の前の智美を捕まえて、引き寄せる。

「寝込みを襲う子だったなんて」

 不満を口にすると彼女はあわあわと言い訳を口にした。

「あ、あまりに綺麗な寝顔で……。
 というより狸寝入りなんてひどいです」

 半べそで訴えられて嗜虐心をくすぐられる。

「へぇ寝てたらナニしてもいいんだ」

「そ、そういうわけじゃ……」

 こっちの気も知らないで……。

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