迷子のシンデレラ

「これは雑穀米?」

 薄紫色の米を指して質問すると頷いた。

「はい。
 これは食べやすくて美味しいんですよ。
 あ、でも、もしお口に合わなかったら、白いご飯を炊きますので言ってください」

「いや、感心してただけ。
 家でも炊けるんだなぁって。
 外で食べたことあるから味は知ってる」

「普段は外食ですか?」

「まぁ。作ってくれる人いないし」

「そう……ですか」

 この話をすれば大抵の女性は「私が作りましょうか?」と言ってくるのに、智美は冗談でも言ってくれない。

 少しは好かれているかと自惚れ過ぎていたかな。

 キスをされた頬をそっと撫でてから冗談混じりに訴える。

「智美ちゃんが作ってくれるって言ってくれたら嬉しいんだけどな」

「そんな、滅相もない」

「ふっ。どんな返し方?」

 彼女がなびかないから気になるのか……。
 いや、そうじゃないだろ。

 自分の中で自己完結しつつ、今日会いたくなった原因の話題を彼女へ振った。

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