迷子のシンデレラ

「二人で私をからかって遊んでいるのでしょう?」

 呆れている智美に言葉を重ねる。

「おや、君は親友の朝岡さんが言うことさえも冗談だって言うのかい?」

「そうは言いませんけど……」

 智美はもごもごと語尾を濁らせてから朝岡へハンカチを送る思いを話し始めた。

「私には恵麻が私へしてくれる半分も返せないし、恵麻もそれを望んでいないんです。
 私が返そうとする以上のものを彼女は持っているんですもの」

「まぁ、そうだろうね」

「ですから。
 食事をご馳走になった時は『食事、楽しかった。ありがとう』って気持ちを込めてハンカチを贈ることにしたんです」

 その旨は朝岡からも聞いていた。
 そういういい子なんですよ。と。


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