迷子のシンデレラ

「おいしい。おいしい」と食べてくれた葉山は「次に食事へ行ける日を楽しみにしてるね」と帰って行った。

 彼を想って選べば嬉しいだなんて……。

 そんなの嘘に決まってる。
 私よりもずっと素敵な女性から素晴らしいプレゼントをもらっているに決まっているから。

 彼が帰ってしまった部屋でぼんやりと彼の座っていた辺りを眺める。

 この部屋にいた。

 それだけで心が浮ついてその思いを追い出すように頭を振った。

 何度か会っているのに、彼はそれらしい雰囲気を出したりしない。
 数度、抱きしめられたことを除けば、ただ食事をしただけの間柄。


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