もののけ会社と甘いキス。

「えぇ、大切に思えば思うほど
寿命の差は、大きくて辛いものよ。
私も経験があるから、よく分かるわ。
こればかりは、どうにも出来ないのよね」

寂しそうに話す雪江さんを見て
この人もそうやって旦那さんを亡くしたんだと
思うと切なくなった。

「でもね。その寿命の差すら愛しく思えるほど
愛せることは、幸せなことよ。
あの子は、不器用だけど人間の優しさも愛しさも
知っているから、きっと乗り越えられるわ。
その証拠にあなたのことが心配して
私に託したぐらいだもの」

えっ?

「社長が雪江さんに私を託した?」

どういうことだろうか?

「あなたの最大の問題は、その月ノ宮一族に
伝わる力よ!
あなたの胸元に刻み込まれた家紋は、
あれは、封印だけではなく、私達……妖怪から
守る結界の役割をしているわ。
それが、ある限りあなたを守ってくれるけど
代わりに抱くことも出来ない。
恋愛になると一番の障害になるでしょうね」

それを聞いたとき
胸がギュッと締め付けられそうになった。

社長と……1つになれない。

あ、いや。
ちゃんと社長に愛されてからだけど……。

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