Shooting☆Star
ベッドの上で毛布に包まった百香は、膝を抱えて座ったまま、薄暗い部屋を眺めていた。
休日にダイチの部屋に通うようになってから、2ヶ月が経とうとしている。
分厚いカーテンを締め切ったダイチの部屋は、いつも薄暗く、夜の方が明るいくらいだ……と思う。
部屋の一角は百香にはよくわからない海外のロックスターのポスターがごちゃごちゃと貼ってあり、これまたよく分からない、おそらく海や雪山で遊ぶ為のボードのようなものが立て掛けてある。
スケートボードと、車輪の小さな自転車だけは、どんな遊び方をするものなのか百香にもわかった。
あれ、使ってんのかな……?ダイチ、外に出ないのに……。
外に出たいな……と、ぼんやりと思いながら、膝に顔を埋める。
キッチンからコーヒーの香りと一緒にダイチが戻って来る。
両手に持ったマグカップの片方を百香に渡して、ダイチはその場に立ったままカップに口をつけた。
「ねえ、」と、百香が口を開く。
「何か着なよ。パンツだけじゃなくて。」
ダイチはカップをベッドサイドのテーブルに置いて、無言でもそもそとTシャツを被って着る。
「これでいい?」
振り返ったダイチに、うん、と頷いて「話の続きは?」と訊く。
「まだ、台本読んでねえの。」
そう言ってダイチはベッドに転がると、枕元に置いた厚い冊子の表紙を指で弾いた。
「ちょっと、気になるんだけど。先に読んでもいい?」
笑いながら手を伸ばす百香を遮って、
「だ〜め。これは俺が先に読むの。」と、百香の手の届かない場所へと台本を追いやる。
ちぇー。とわざとらしく言って笑う百香を眺めて、ダイチは百香ってよく笑うんだなと思う。
仕事の時の微笑みとは違う、楽しそうな笑顔。
起き上がり、コーヒーを一口啜って、ダイチは百香を振り返る。
「なあ。百香、俺たち、ちゃんと付き合おう。」
ダイチの言葉に顔を上げた百香は、困ったような顔をしてそれから少し笑った。
「……何があっても、ずっと一緒に居てくれる?」
「ああ。約束する。」
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