Shooting☆Star
社長は「百瀬だけここに残って」と、ダイチと祐樹を午後の仕事へ追いやって、百香と向き合う。
百香は思わず視線を外して、窓の外を眺める。
ああ、この人はきっと、私とダイチが付き合うのを良く思っていなかったのだ。
だから、あの時、即座に祐樹を選んだのだ。
3年前、百香がダイチと付き合うことを相談した時、彼女はそれまでのダイチのスキャンダルと仕事を理由に猛反対した。
最終的にダイチの強い希望に折れ、絶対に誰にも知られないこと、何があっても結婚は絶対に許さないこと、どちらも仕事を辞めないこと等を条件に、付き合うだけなら……と、許可を出した。
今となっては、彼女が反対した理由が百香にもわかる。
「お母さん……」と、窓の外に視線を向けたまま百香が先に口を開いた。
「助けてくれてありがとう。」
「百香、あなた、パパに似てそういうとこ甘いんだから、ちゃんと自分で決めなきゃだめよ。」
母と呼ばれた社長が笑う。
「自分で選んで、自分の意志で進むのよ。」
「うん。わかってる。」
ねえ、じゃあ……と、百香が続ける
「この仕事、辞めていい?」
「駄目に決まってるでしょ。あなたには……せめて、あの子達がステージを降りるまで。見守って欲しいの。」
「嘘が本当になったとしても?」
「ええ、嘘が本当になったとしても。」
振り返った百香と社長の視線が合う。
ふふふ、と、どちらともなく笑い、「さあ、百瀬、仕事の時間よ!」と、社長がドアを開け、百香の背中を押した。
本社の執務室って、賑やかだな……と、思いながら百香は廊下を歩く。
私には、あの小さな事務所がちょうどいいな、とも思う。
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