Shooting☆Star
魔女の横顔

☆1話☆

6月も後半のその日、祐樹・ダイチ・弘也・拓巳の4人は珍しく示し合わせて馴染みの店に集まった。
秀と圭太も誘ったのだが、二人とも深夜の撮影があると言って、百香と一緒に何処かに出掛けて行った。
昔から変わらぬ佇まいの小さなそのバーは居心地がよく、それぞれ数えきれないくらい足を運んでいるが、誘い合わせて飲みに来ることは少ない。
4人が揃ってドアを開けると「おや、珍しいですね……」そう言ってマスターは、他に客の居ない店内を見回して店の外に出た。
ドアに掛けられたプレートを裏返して、閉店の表示にする。
「せっかくなので、今夜は貸し切りに致しましょう。どうぞ、ごゆっくり。」
マスターはカウンターに戻ると、静かにグラスを用意し始めた。
祐樹と拓巳はそれぞれキープしているボトルを、ダイチはその日のお勧めをロックで。弘也はカンパリソーダとチョコレートをオーダーする。

もうすぐ百香の誕生日である。
毎年、百香の誕生日はメンバー揃ってお祝いをする。
いつから始まったのかは覚えていないが、いつも皆の面倒を見てくれている百香に感謝を返す日みたいになっている。
今日も、その相談をする為に集まった筈だった。
「そういえばさ、祐樹は百香にプロポーズしたの?」と、拓巳が早速、脱線し始める。
否定する祐樹に、「モモちゃんの誕生日にプロポーズしなよ」と拓巳は言って、プレゼントは誕生石を内側に入れたペアリングが良いだとか、月ごとの誕生石の意味だとかを嬉々として語り始めた。
「拓巳、お前、女子かよ。」
苦笑するダイチと祐樹に、「でも、女の子はみんなそういうの好きだよ。プロポーズなんて1度きりなんだし、ロマンチックな方が良いじゃん。」と、拓巳は膨れる。
「オレ、そういうキャラじゃないし。そもそも、その前に社長が許さないでしょ。」
苦し紛れに呟いた祐樹の言葉に、ダイチは思い出したように弘也を振り返った。
「そういえば、弘也の時って、どうだったの?社長、相当キレてたんでしょ?」
拓巳が「僕も聞きたい。ヒロくん、この話、いつもはぐらかすよねぇ。」と、期待に満ちた目で弘也を見る。
弘也は苦笑して「んー……まあ、そろそろ時効だろうから話すけど。でも、モモには、ぼくから聞いたって絶対言わないで。」と、前置きした。
「あれは社長よりもモモが凄かったんだよ。」
「百香が?」
「モモがいなかったら、ぼく、辞めてたと思う。」
そう言って弘也は小さなチョコレートを口に運ぶ。
あれも6月だった。
13年前の6月。
あの年も、今年と同じようにゴールデンウィークが終わる頃に梅雨入りして、6月の早々に梅雨が明けた。梅雨が明けた途端に、一気に暑くなり始めたのを覚えている。
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