Shooting☆Star
気に入ってくれるかな……。
百香の心配をよそに、祐樹は嬉しそうに声を上げた。
「お、これ、欲しかったやつ。……モモ、あの店、一人で行ったの?」
「うん。店員さんに茶化されたよ。なに君だっけ?あの短髪の、よく笑う、若い男の子……」
祐樹は早速、カバーを付け替えて見せる。
「イトウちゃん?ピアスいっぱい着けてるやつだろ?」
話しながら、一旦、付けたカバーをすぐに外して、ラッピングの残骸と一緒に角度を変えて写真を撮り始めた。
「そうそう、イトウくん。多分、その子。」
「何か、言ってたか?」
「憧れだって」
「なんだそれ」
撮った写真を満足気に眺めて、再び端末にカバーを付けると、祐樹は百香を振り返る。「この写真、後でSNSにアップしていい?めちゃくちゃ嬉しい。」
「そんなに?」
「うん。……モモが選んでくれたもの、嬉しい。」
「毎年、ちゃんと選んでるよ。」
そう言って笑う百香から、祐樹は目を逸らした。
「だって、いつも食べ物とか、消耗品とか。残らないものだろ?」
「そうだっけ?何がいいか迷ったんだけど。」
百香はとぼけた返事をする。
本当は、メンバーに対して、身に付けるものをプレゼントするのは気が引けていた。
メンバーが身に付けている、お気に入りのアクセサリーなどの身の回りの品は、すぐにファン達にメーカーを特定され、誰からのプレゼントか、もしくは自分で買ったものか、入手経路まで探りを入れられる。
しかし、百香はプレゼントを選びながら、もういいだろう、と、そう思った。
それがたとえ嘘だとしても、世間からみた私達は事務所公認の恋人だ。
誰に何を言われても構わない。
今年は気にせずに、祐樹が喜びそうなものを渡そう、そう思っていつでも身に付けられそうなものを選んだ。
「でも、身に付けるものって、難しいね。靴とか服はサイズあるし。ユウくん、アクセサリーはあんまり着けないし。これなら、ずっと使えるかと思って。」
「うん。ずっと使うよ。大事にする。ありがとう、モモ。」
祐樹はカバーの内側に施された刻印を、指先でそっとなぞる。
「なんか、これ、御守りみたいでいいな。」
「そう?」
百香は素っ気ない返事をしたが、その声に嬉しさが滲んでしまう。
祐樹はカバーを閉じると、スマートフォンをコートの右のポケットへと押し込んだ。
そのまま、両手をポケットに突っ込み、百香に向き合う。
目が合って、祐樹は珍しく真面目な表情をした。
「モモ。オレも、モモに渡したいものがあるんだ。」
祐樹はコートのポケットから手を出すのと同時に、左のポケットから何かを取り出す。
「モモ、これ。」
白いリボンのかかった小さな黒い箱を差し出されて、百香は戸惑った。
「なに?これ。」
百香の手をとって、その箱を小さな手の平に乗せて祐樹は「いいから、開けて。」と促す。
受け取った箱のリボンを解いて蓋を開けると、黒いベロアの台座にシンプルな金のリングが2本、並んでいた。
小さい方には内側に薄いオレンジ色のトパーズが、大きい方の内側には虹色に艶めくムーンストーンが埋め込まれている。
驚いて見上げると、祐樹は真っ直ぐに百香を見ていた。
「モモ、オレの奥さんになって?」
「奥さん……?」
百香は一瞬、意味がわからない……という顔をしてから、ふふふと笑いだす。
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