Shooting☆Star

☆2話☆

もし、結婚して、家族になったら……と、百香は自分の“家族”のことを考える。
百香が幼い頃から、母は仕事一筋だった。
俳優だった父は百香が産まれてすぐに引退し、百香が小学校を卒業する前に、病気で亡くなった。
事情があり父と母は籍を入れていなかった。
百香の名乗る“百瀬”という姓は父のものだ。
百香が社会人になって家を出るまで、百香にとっての実家は母の実家だった。
木下のおばあちゃんと叔母夫妻、従姉妹のカレン、そして……母の清香。
百香は父の居ないその家が苦手だった。
母から見た父は、どんな人だったのだろう……?
いつもまっすぐな目をしていた。優しかった父。
百香には理想の夫婦像がない。それが、百香は不安だった。
「あのね、ユウくん。」
応えなくては。不安そうな祐樹に、百香は思う。
理想なんてなくていい。その方が何にでもなれる。
祐樹との生活は、きっと変わらずに楽しいだろう。
「私、夫婦ってものがよくわからない。家族っていうのも、私にとってはS☆Sが家族みたいなものなの。」
祐樹は「うん。」と、相槌を打つ。
「だから、上手くやっていけるか、わからないけど。でも……私を選んでくれて嬉しい。ありがとう。」
嬉しい、と言った百香を、そのまま抱き寄せて祐樹は百香の耳元に顔を寄せた。
「ほんとに、オレでいい?」
「うん。」
祐樹の背中に手を回して、抱き締め返す。
祐樹の腕の中は暖かくて、その肩に顔を寄せると、トクトクと脈打つ心臓の音に、懐かしい気持ちになる。
「ユウくんがいい。」
百香のスマホのアラームが小さい音を立てて日付が変わったことを知らせた。
百香は慌てて祐樹から離れ、アラームを止めにいく。
「ユウくん、お誕生日おめでとう。……半分だけじゃなくて、残りの人生、全部あげる。」
そう言って照れて笑うと、帰ろ、と祐樹を振り返る。
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