Shooting☆Star
祐樹は百香の左手をとって、薬指にそっとリングを差し入れる。
祐樹にサイズを教えた記憶はないが、誂えたようにぴったりなサイズだった。
百香も祐樹の左手を取って、台座からリングを外すと、祐樹は「えっ、オレも着けるの?」と、戸惑った顔をした。
百香は思わず笑って「じゃあ、何でペアで買ったの?」と訊く。
「ペアじゃないと意味がないと思って……」
「それなら一緒に着けないと意味ないでしょ?」
祐樹の大きな掌を眺める。
星を掴む、か。
確かに、私達にぴったりだな、そう思って百香は祐樹の指先にそのリングを通した。普段アクセサリーを着けない祐樹の手に、そのリングはスッと馴染んで、元からそこにあったみたいに輝く。
自分の左手を重ねて、違和感なく同じものが収まっているのを眺める。

shooting star…
流れる星 キラキラ光って
この想いキミに 伝えて
shooting star…
流れる星 キラキラ光って
キミの願い叶えて いつか

ふと、S☆Sのデビュー曲のメロディーを思い出す。
何故か、この曲は、発表から5年以上も経ってからヒットした。S☆Sの勢いが付いたのもその頃だったように思う。
コンサートのオープニングでこの曲をやるようになって、S☆Sは楽曲もいいけどパフォーマンスがいいよね、と評判になったのだ。
ステージ上で手を伸ばす彼等は、それぞれの星を掴んだのだろうか、その願いは叶ったのだろうか。
隣に立って、重ねた手を見つめる祐樹を見上げて「どう?慣れそう?」と、訊いてみる。
祐樹はなんだか神妙な顔をして、「これ、夢じゃないよな……」そう言って百香をみた。
「夢じゃないわよ。」
百香は笑って、これ、どうしようね、と呟く。
朝になったら、メンバー全員が集まる月末のミーティングがある。
その前に社長と本間さんにはこれを伝えておかなければならない。
本間さんはともかく、社長は流石に動揺するだろう。
祐樹の性格からして、自分の両親には既に相談済みだろうし。
急に、考えなければならないことがたくさん増えたな…と、思う。
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