ピ リ カ(動物と会話する女の子)
「あら! 佐伯さん……でしたよね? こんな処でどうしたんですか?」精一杯の演技だった。

「遊びに来たよ!」

「そうですか。いい季節に来ましたね楽しんで下さい」

「ああ、楽しむよ。それはそうと君に話があって来たんだけど……」

「はい? この私に?」こいつはなにか企んでいると思った。

「こんな処じゃなんだから、コーヒーでも飲みながらどう?」

「う~ん、そんなに時間無いけどいい?」ピリカは時計を見ながら忙しそうな演技をした。

「うん、かまわないよ」

二人は大学構内にあるカフェに入り向き合って座った。

「話しって何ですか?」少しつっけんどんな言い方をした。

「僕、考えたんだけど、君と友達になりたいんだ」

コーヒーを飲む手を止め「そんなことでわざわざ、この札幌まで来たんですか?」

「駄目なの?」

「駄目って」それ以上の言葉が出てこなかった。

「僕さぁ、動物の声が聞こえる能力を持てあましてた。 というかこんな能力が嫌だった。 以前に他人に話したら、すっかり変人扱いされだんだん。 友達も、僕の前から去っていく。 そんな時君を見かけたんだ。 衝撃的だった。 僕以外にも同じ能力を持った人間がいるんだ。 そう思ったら内心ホッとしたんだ。 そしてもっとたくさん話したかった。 横浜で話が全然出来なかった事を悔やんでた。 何日も何日も…… 気が付いたら飛行機のチケットを予約し札幌に来ていたっていうわけ。 ごめん、迷惑ならこのまま横浜に帰るけど……」

言い終えた佐伯はピリカの顔色をうかがった。 危険性が無いとピリカは判断した。

「わかりました。私で良ければお友達になりましょう」

二人は再会の握手を交わした。

「改めまして、ようこそ札幌へ!」

「久しぶりですピリカさん!」

「横浜では失礼しました。 私、人見知りなのでつい……」

「気にしないで下さい。 それよりピリカさんの能力の話しをしてくれませんか?」

ピリカは動物との会話や龍の話。 パラレルワールドの世界。 霊能者Fさんとの経緯など一気に喋りまくった。 ピリカも不思議な世界の事を話せる相手が今までいなかったので、溢れ出る湯水のごとく話し続けた。

「面白い! 僕、札幌に来てよかった。 本当にそんな世界があるんだ…… ピリカさんの話わかる。 なによりもピリカさんの体験は僕の体験なんかよりはるかに凄いよ。 下手な新興宗教の教祖より真実かもしれない」

「真実かどうか、私にはわからない。 けど、確かに私が経験した事だけどそれが真実かどうか、もしかして私の錯覚かな? とか誰かに相談したくても相談する相手がいないの」

心なしか寂しげな表情をするピリカ。

「そっか、昔でいう査神(サニワ)っていうやつだね?」

「査神? なにそれ……?」

「よく、私には高級霊が憑いているとかって本人はいうけれど、それが本当に高い世界の存在か、又は邪霊の仕業かどうかっていう、審査をする人のことをサニワっていうんだよ……」

「何処に行ったらサニワしてもらえるの?」

「そこが問題なんだ」

「問題って、どういう事?」

「そのサニワが信頼できるかどうかっていうこと」

「なにそれ? 面倒くさそう」

「うん、やっぱり自分次第ってことかな」

「最後はそうなるのか……」ピリカはサニワをしてほしいと本当に望んだ。

「もう、そろそろ僕は帰るよ。 そんなにのんびりしてられないんだ。 そろそろ学校に行かないとね。 バイトもあるし貧乏暇無しってやつ。 また横浜に来ることがあったら連絡ちょうだい。 これ僕のメルアド。 本当に楽しかったどうもありがとう」

「今日帰るの?」

「うん、君に会えて札幌に来た目的が成就したからこれでもう帰る」

「せっかく会えたのに……」さっきまでのピリカとは態度が変わっていた。 ピリカにも理由がよくわからない。

「だって、ピリカさんは用事があるんだろう?」

「いいの、予定変更してもらうから。 もう一泊していかない? ススキノでジンギスカンでも食べてビールでも飲みませんか? ご馳走しますから」

「いいけど、酒飲むにはまだ早いよ」

「そうだ……動物園行きません? そこから直通のバス出てるんです」

「うん決めた! 行こう!」

二人は動物園に入った。 ゲートを入り、いきなりオオワシが話しかけてきた。

「ピリカ、久しぶり! もう私のこと忘れたかと思った」

「そんなことありません。 忙しかったの……」

「そうかい。 隣の男の人は誰?」

「僕は佐伯でピリカさんの友達です」

「あれ、あんたも話し出来るのかい?」

「ハイ、少しだけですけど」

「よろしく」

それから三〇分ほど歩きチンパンジー館に二人は入った。 ピリカを見つけたチンパンジーのボスが駆け寄ってきた。

「おうピリカ、久しぶり!」

ピリカが「この夏は暑かったですね」

「うん、今年は暑かった。 で、そいつ誰?」

「私の友達」

「そのオスは強いのか?」

「あのね、あんた達と違うの。 強い弱いは関係ないの」

やりとりを聞いていた佐伯は思わず笑ってしまった。

ボスが「ピリカ、そのオスわかるのか?」

佐伯が「僕はピリカの友達」

「……話をした! ピリカこの男話したぞ!」

「そう、私と同じ能力があるの」

「そうなのか? 他にも話せる人いたんだ! 今度、俺と決闘しようか?」

「あのねぇ!」ピリカがそのチンパンジーに睨みをきかせた。

ボスが「嘘だよ、よろしくな……」

「ピリカさんはよくここに来るのかい?」

「年に三回は来ます。 たまに来るとさっきみたいに動物が話しかけてくるから、他の客はその様子を観て怪訝な顔をするの。 だから普段はあまり来ません。 でも、落ち込んだ時とかは必ずここに来るの。 動物たちと話すと元気が出るの」

「それはいえるね。 僕は港に向ってカモメと話す事が多いよ。 基本、動物は補食の事が多いけどカモメのジョナサンみたいのがいたら話してみたいと思うけどやっぱりいないね……」

翌日二人は再会を約束し札幌駅で別れた。
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