ピ リ カ(動物と会話する女の子)
五「体内離脱」

「ミミ、モモおはよう、学校行ってくるね!」ピリカが登校前に声をかけた。

ミミがどことなく淋しげに「ピリカ、さよ……%$&%」

「ミミなんか言った?」

「行ってらっしゃい、ピリカ」

「ミミ、モモ帰ったら三人で尻別川に散歩に行こうね」

六時間目の授業中、母親からメールが入った。

「ミミが調子悪いみたい! 早く戻って事情を聞いてちょうだい」

ピリカは胸騒ぎを覚えた。

「マリコ、ゴメン今日急用出来たの、掃除当番変わってほしいの……いい?」

「うん、わかったよ早く帰りな」

ピリカは電話をかけながら自転車を走らせた。

「お母さん、ミミどうかしたの?」

「うん、朝から食欲無いし元気も無いのよ。 だからミミに聞いてほしいのあんた今どこなの?」

「今、ビデオ屋の所だからあと十五分くらいで着く」

「わかった。気をつけて!」

大急ぎで帰宅したピリカはミミのいる和室に向った。

「ミミ、ただいま、どうしたの?」

何の反応もなかった。

「ミミ、ねぇ、ミミ返事して」

ミミは目を開けた「ピリカ、私……もう駄目みたい、モモは?」

「うん、今モモ連れてくるから待って」

ピリカはモモの所に走った「モモ、ミミがミミが」

「ミミがどうしたの?」

「元気ないの、で、モモって言ってるの」

モモも駆けつけた。

モモが「ミミ、どうしたの?」

応答しなかった、いや出来なかった。 ミミは全身の力が抜けていくのを徐々に感じていた。
ピリカには意味が全く解らない。 とにかくミミの一大事で生気が抜けていくのが感じられた。
その時、ルーに聞いてみようと心に浮かんだ。

刹那だった「血栓が心臓の血管を塞いでいる。 あなたが処置しなさい」ルーの答え。

「私、そんなことやったこと無いし、出来ないよ」

「あなたがミミの身体に入って血栓を取除く急ぎなさい」

「何のことか解らない……?」

「右手をミミの心臓に当て」ルーの言われるように意味が解らないまま従った。

「次に意識を心臓の詰まった血管に集中する」

ルーの力強い意思の力を感じた。 次の瞬間ピリカの目に映ったものは心臓だった。

ルーが「ミミの心臓」

「えっ、うっそでしょ?」

「次に太い血管を探す」

「血管だらけだけど、あっ? この血管だけ黒ずんでる」

「その中に入って血栓を全部取除く」

ピリカは指示に従った。 程なくして血栓はピリカの手によって完全に除去された。

「もう大丈夫」ルーの意識が伝わってきた。

次の瞬間ピリカの意識も元に戻った。 同時にミミは大きく息をして目を見開いた。

「みんなどうしたの? モモ家の中に入ってきてお母さんに怒られるよ」

その声を聞いたモモは「あんたねぇ」と言いながらミミの頭を丁寧に舐めた。

母親がピリカにそっと聞いた「あんた、また何かやったの?」

「うん、心臓に血栓があって取除くように指示されたから、全部取ったの。 そしたらああなった」

「あんた、凄いことやったのね」

その時ミミが「ピリカお帰り。 帰り早くない?」

「あんたねぇ、今にも死にそうだったのよ。 あんたの心臓の血管が詰まってて私が綺麗に掃除したんだからね、感謝してよね……」

「ピリカ、何でそんなに偉そうなの?」ミミには事の重大さが理解できてなかった。

「あんたね」ピリカの目から涙が溢れていた。

「私、隣の家に遊びに行ってきま~す」ミミは走り去った。

ピリカが「モモ、どう思う? あいつの態度」

モモはしっぽを大きく振り黙って犬小屋に戻っていった。 ピリカは部屋に戻り、今の出来事を振り返ってみた。 そして、もう一度ルーに語りかけた。

「ルーさん、さっきの事なんですけど、人間の体内にも侵入出来るんですか?」

「できる」

「コツは何ですか?」

「呼吸を合わせること。 あとは経験」

「経験か……」

ピリカが「モモ、散歩行くよ。 ミミは戻った?」

「ハイよ。でもミミまだ帰らない」

「モモ、ミミ呼んで」

モモは隣家に向って遠吠えした。

すぐ反応があった「ミャ~」

ミミが足早に戻ってきた。

ピリカが「ミミ、身体の調子どう?」

「いつもと変わらないけどなんで?」

「よかった。 これから川に散歩行くけどミミはどうする?」

「ミミも行く」

「じゃあ三人でしゅっぱ~つ!」

三人が川の土手を三十分ほど歩いた時だった。 何か黒いものが道の端に横たわっていた。

「モモ、あの黒いのなんだと思う?」

「鳥の匂いがするけど、私には見えない」

「そっか、目は私の方がいいもんね」

三人は恐る恐る近寄ってみた。

一番先に反応したのはミミだった。

「あれ、トンビでしょ!  ピリカ怖いよ」

「そっか、ミミの天敵だもんね、でもあのトンビなんか変?」

そのトンビは羽を痛めたらしく飛べないでいた。

「トンビさん、どうしたの?」ピリカが優しく言った。

「車に羽をぶつけてしまい、何だか思うように飛べないのさ」

「痛むの?」

「痛い、あんた人間なのに私の言葉わかるの?」

「うん、わかる」

遠くから見ていたミミが声を掛けてきた。

「ピリカ、早く行こうよ、トンビなんかほっといて行こうよ」

ピリカは振り返って「あんた、なにいってるのよ! たく! 生きものはみんな一緒なの。 命あるものはみんな大事。 あんただってさっきは死にそうだったんだからそのくらい解りなさい!」

「ミャ~%$#&%’」

ピリカはまたルーを念じた。

返答がきた「羽に骨折はない、筋を痛めてる」

「ミミの時のように私に癒せる?」

「癒せる」

ピリカはトンビの顔をみて「トンビさん、これから私はあなたの痛めてる羽を触ります。 驚かないで危害は加えないから」

トンビの羽にそっと手を当てた。 さっきと同じように小さくなったピリカには羽の筋が見えた。 翼の中程の筋が黒く熱も感じられた。

「ここね。 え~と?どうするの?」

「健康な元の状態を意識して手でさする」ルーの指示だった。

一生懸命両手さすっていると筋は段々と熱が引き色がピンクに変わってきた。

「もう大丈夫」ルーの声がした。

意識が戻ったピリカはトンビに「羽、動かしてくれる?」

トンビは何度か羽ばたいて見せた。

「全然痛くないです。 もう家族と会えないかと思いました。 ありがとうございました」

「もう大丈夫と思うけど無理しないでね」

その後、トンビは何度もお礼をいって飛び立った。

ミミが「ピリカ、行こう」

「ミミ、チョット待ちなさい。 あんたねぇ、さっきの態度はなんなの? あんたって冷たい猫ねぇ……」

「だって、トンビはいつも私達を空から狙ってるのよだからつい……」

「あんた、聞いたでしょ、トンビにも家族がいるって」

「トンビに家族がいたらどうしたの?」ミミは不思議そうな顔をして言った。

「まっ、どちらにしても命は大切なの! 解った?」

「ミャ!」

「モモ行くよ」

家に戻ったピリカは母に話した。

母親が「あんた、どこでそんなこと学んだのよ?」

「ガイドのルーさんが教えてくれたの」

「私にもそのガイドいるのかい?」

次の瞬間「とうぜん」と伝わった。

「いますって」

母親は目を大きく見開いて言った。

「私も話してみたいけどどうやったらいいの?  聞いてみて」

「肯定」

「肯定しなさいだって」

「肯定か……」

母親は人差し指を顎に当てながら「何を肯定?」

「自分のガイドの存在を肯定でしょが」

「するする」

「お母さん、何それ? その、するするってなんか軽くない?」

「軽かった?」

「駄目だこりゃ……」

就寝前にピリカは布団の中で今日一日のことを振り返った。 ショッキングなことが今日は多すぎた。

「何で私が? 他にどんな能力があるんだろう?」

次の瞬間だった「チャネリング」心の声が聞こえた。

チャネリング? なにと?

「意識体」

「意識体? 例えば?」

「死んだ婆ちゃんの意識」

「お婆ちゃんに会いたいお願いします」

次の瞬間、祖母の意識体とチャンネルが合った。

「お婆ちゃん?」

「ピリカかい?」

「うん、わたしピリカ」

「そっちのみんはな元気でいるかい?」

「うん、みんな元気だよ。 お婆ちゃんはどんな世界にいるの?」

「お前が視たシャンバラに似たもうひとつ上の世界」

「毎日、何やってるの?」

「他の存在達の役に立つ仕事」

「お爺ちゃんは一緒?」

「いや違う世界」

「なんで?」

「魂は自分の意識に合った世界が一番居心地がいい、お爺ちゃんは自分にあった別の世界にいる」

「お婆ちゃんは行かないの?」

「お婆ちゃんにはこの世界が自分を表現できて一番居心地がいい」

「へぇ~? そうなんだ」

「こっちは私と同じ意識の人達」

「じゃぁ心の葛藤とかストレスって無いの?」

「全く無い。 考えが全て相手に伝わるから、ピリカの世界のようなことはない」

「楽しいの?」

「毎日楽しい。 人間的な楽しさとは意味合いが違う」

「どう違うの?」

「簡単にいうとピリカの世界はものごとを自分の為にする。 多くの人は自分の利になることを考え自分の為に蓄える、そこが大きく違う。 この世界は他人に施しをするのが楽しい、みんな同じ考えだからいつも恵まれてる。 全てが」

「な~んか良くできた世界だね」

「機会があったらもっと上の世界も視てくるといい。 為になる。 今日は懐かしかった。
お前に会えて。 またおいで」

そしてピリカは戻った。

「今日は何だか疲れたから寝よう」
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