ピ リ カ(動物と会話する女の子)
六「パラレルワールド」

  母親が「ピリカ、今日の帰りは遅くなるのかい?」

「いつも通りだけと思うけど何かあったの?」

「聞いてみただけ」

「なにそれ? あんたはミミか……」

「モモ、いってきま~~す」

いつも通り自転車を走らせ橋のたもとに来た時だった。

「上!」突然ルーの声。

「……え、上?」自転車を止め上を見て呆然とした。

空にはとてつもなく大きくて丸いUFOがピリカの真上でホバーリングしていた。 

「UFO? でかい……! もしかして私は誘拐されるの?」

 橋の向こう側から歩いてくる女性三人は全然気付いてない。

「あなたにしか視えない」

「なんで私だけ……?」

「波長が合った」

「そんなもんなんだ??」

「そんなもん! 乗る?」

「学校行くから乗らない」

ピリカはルーの誘いを断って学校に向った。 それにしても倶知安は自衛隊がいるのにレーダーに反応しないのかしら? 大事な税金使ってなにやってるの……たく。 ピリカは変なところに冷静だった。 授業が終わり校舎から出てすぐ空を確認した。

「右良し・左良し・上空良し・ピリカ下校開始」一人呟くピリカだった。

今朝、UFOを目撃した橋に自転車を止め空を眺めたその刹那。

「行こう」

突然、なに者かが呟いてきた。

「ルー助けて!」恐怖からルーに助けを求めていた。

「大丈夫!」

次の瞬間、薄い乳白色の室内にピリカは移動していた。 そこは部屋全体がふんわりしていて、空気感が清々しく穏やかでなんとも居心地がよかった。 突然、三体の白く光る人影のようなものが姿を現した。 

これってもしかして宇宙人なの? 恐る恐る「あなた達はだれ?」

一人の意識がピリカの胸に飛び込んできた。

「あなたをよく知る者」

その瞬間、懐かしさを感じ胸が熱くなりついには大泣きするピリカがいた。

その三人も同様に泣くのが伝わった。

「もしかしてあなた達はわたし?」

「そう、未来の」

「私の未来は宇宙人なの?」

「その表現は不的確。今のあなたも立派な宇宙人。 当然人は皆そう。 宇宙人という概念は地球だけのもの」

「あっ、そっか、そうよね」

三人からの笑いの波動が伝わた。

「どの位、未来なの?」

「今の地球の計算だと三百年後くらい。 未来の地球には時間という概念がありません。 正確には語れません」

「あっ! 知ってます。 先日シャンバラに行った時に同じ事を教えてもらいました。 時間軸の消滅ですよね」

「理解いただいて嬉しいです」

「ところで、今日は朝から私の上にUFOが出現してどうしましたか?」

「質問の答えの前にひとつ訂正します。 あなたの言うUFOとは未確認飛行物体のことです。でも今のあなたにとって未確認ではなくなったので宇宙機と呼んで下さい」

「あっ、はい解りました」

「今朝、急に現われたのではありません。 今までも幾度となくあなたの上空におりました。 今日はあなたの周波数が私達に同調したので初めて視えたのです」

「それって、私の周波数が上がったって事ですか?」

「そうとも云えます。 正確に言うと元に戻ってきたと表現した方が適切」

「で、何で宇宙機に乗せられたんですか?」

「宇宙を見てみませんか?」

「見たい。 みたいです!」即答した

「こちらにどうぞ」違う部屋に誘導された。

そこは透き通った空間、でもガラスではない独特の透明なシールドで囲まれていた。

「目の前にあるのが地球、右が月。 少し変わったものを見せます。 軽く眼を閉じて下さい」

ピリカは言われるまま軽く眼を閉じた。

瞼に浮かんだのはグレーの星だった。 よくみると柄が地球によく似ていた。

「地球に似てる? これは?」

「ピリカが住んでる今の地球」

「待って下さい。 地球はこんな色じゃありません。 さっきあなた達もみたでしょう?」

「今見えるたくすんだ地球は、今のアストラル体の地球。 
今、住んでいる地球の想念体の姿。 地球のアストラル体と人間のアストラル体が同調して黒ずんで視えてます。 そのネガティブなエネルギーの歪みが自然災害として現われてます。 本来の地球はあなたの視てきたシャンバラのような環境。 近い将来地球は再生されます。 但し、ただ再生されるわけではありません。 今は産みの苦しみのようなもので、これを超えなければなりません」

ピリカは胸が締め付けられる思いで徐々にネガティブになってきた。

「あなたを責めているのではありません。 あなたには今の地球の姿を確認してほしかった」

次の瞬間、元の場所に戻っていた。 今の地球の人間ってバッカじゃないのまったく、何故か後味の悪さを感じていた。

「モモ、ただいま~」

「お帰りピリカ。 今日も早いねぇ」

「うん、何だか解らないけどお母さんが用事あるみたい。 だから早く帰ったの、それより今、宇宙人と会ったよ」

「宇宙人ってなに……?」

「この地球以外の人のこと、わかる?」

「……?」

「まっ、いっか…あとでね。 それより最近ミミの姿見てないけど」

「ミミに彼氏出来た。 不良猫してる」

「えっ! 相手は何処の猫?」

「裏の方に住んでる黒猫のニャン吉」

「ふ~ん、ミミに彼氏か~。で、そのニャン吉ってどんな猫なのよ?」

「たまに私の前を通って何処かに行くけど、興味ないから」

「そっか、ミミにあったら彼氏のこと聞いておくね」

「お母さん、ただいま~ミミが不良になって彼氏出来たって知ってる?」

「何ですか急に」

「ミミに彼氏出来たんだって」

「知ってるよ。 黒い猫でしょ? 最近遊びに来るけど」

「ニャン吉って言うんだって」

「ニャン吉か、今度餌でもあげようかね」

「それとお母さん、今日は何かあった?」

「なんで?」

「朝、帰りは遅くなるのかい? って聞いてたからなにか用事あるのかなって」

「そのあとに聞いてみただけって。 言ったでしょ」

「うん、言ったけど」

「そんだけ」

「そんだけ?」

「そんだけよ」

「本当に本当にそんだけ?」

「そんだけていうか、ピリカしつこい」

「な~にそれ…」

「そんな事より、ミミがデートしてたら呼んできて。 彼氏にもおやつ食べさせてあげるって」

「わかった。見かけたら言っておくよ」

部屋に戻り宇宙機での出来事を思い起こしていた。

三百年後の私?

時間軸の消滅?

本当の地球……?

三年に進級してからいろんな事が起こりすぎて、頭の整理を出来ていなでいた。

ルー、RON、宇宙機、体内離脱、シャンバラどれも初めて経験することばかり。 
ていうかなんで私が……?  ベッドで横になりながら、もう一度自分を見直してみた。

「以前から動物と話しできるけど、それとこの一連の事はなにか関係あるのかなぁ?」

その時だった。 突然ド~~ンという音が響きわたった。 ベットから飛び起き、辺りを見渡して二度ビックリ。 倶知安の自衛隊に何かあったのでは? 次の瞬間、あっ、私が寝ている……、えっ? もしかしてわたし死んだ?

「体外離脱」ガイドのルーだった。

「この前の時とすこし感覚が違うんですけど……」

「今回は完全離脱」

「へ~体外離脱にも種類があるのか……?」

「ある」

「で、今度はどこに?」

「パラレルワールド」

「パラレルワールド?  初めて聞く言葉。 あのう、簡単に説明して下さいませんか?」

「怒ってますか?」

「いつも突然で少しいらってしてるだけ……」

「時間の感覚が無いので失礼」

「いえ、いいですけど。 気を悪くしないで下さい今のわたしの言動謝ります。 すみませんでした」

「パラレルワールドとは平行宇宙の事をいいます。 宇宙はたくさん存在します。 当然たくさんの地球があってたくさんのピリカさんが存在します。 それらが平行して同時に存在することです。 そして微妙に影響し合ってる」

「じゃぁ、私と同じ女の子がこの宇宙に何人も存在するということですか?」

「はい」

「それって見られますか?」

「何人か見てみましょう」

ピリカは何ともいわれぬワクワク感をおぼえた。 次の瞬間、地元倶知安町の通い慣れた学校の教室。

「なんだいつものクラス?」

しかし教壇で生物を教えている先生は、なんと!チョット老けたピリカだった。

「えっ……これってわたしなの? しかも、私の好きな生物の先生になってる。 それに生徒の中にはミヨリや理恵もいる……超うけるんだけど」

「つぎ行きます」

「なにここは?  石造りの洋館が建ち並ぶこの雰囲気はヨーロッパ?」

「イギリス」

「えっ!わたしの憧れの国……」

そこに一人の女性が路上で絵を描いているのが見えた。 どことなくピリカに似た雰囲気がする。 しかも顔はピリカの目鼻立ちを白人風にアレンジした感じだった。

「ルーさん、これもわたし?」

「そう」

「え~本当に? 私はイギリスが好きで、町並みをスケッチしてみたい。 出来れば絵を描いて生計を立ててみたいと思ったことあるの」

「パラレルには法則があります。 自分がなりたい職業やどことなく哀愁を感じる場所などは、既にパラレルの自分がやっている可能性があります。 思考に無いものは形になりませんから。当然、同じ職業を選ぶ自分も存在します」

「じゃぁ、動物と関わっている私は存在しますか?」

「当然」

次の瞬間学校内が視えた。
 
「ここ何処?」

「北海道大学獣医学部」

ピリカは授業を受けていた。

「えっ、私のパラレルに頭の良いのがいるんだ。 凄いね北大か……面白い!」

次の瞬間ベッドに横たわる自分が確認できた。

「そっかぁ、パラレルワールドか…… 私の知らない世界って沢山あるんだ。 あっ、ルーさんに聞き忘れたことが…… ルーさ~~ん」心で念じた。

「なにか?」

「今までの全ての事はなんで今で、そしてわたしなの?」

「質問の意味が解りません」

それ以後ルーからの返答がなかった。

「どういう事?」

その時、玄関の方からモモの声がした。

「ピリカ、ミミ戻った。 ニャン吉も来た」

どれどれニャン吉はハンサムさんかな~?

「お母さん、ミミ帰ったよ。 ニャン吉も一緒だって」

「わかった。今行くから待ってるように伝えて」

母親とピリカはおやつの缶詰を用意して外に出た。

「こんにちは、あなたがニャン吉くんね!  わたしはピリカ、こちらがお母さんです」

「僕ニャン吉、三歳。 ピリカさんの話しはミミから聞いてます」

「へ~で、どう聞いてるの?」

「とっても話のわかる人間で、すこし気が強く怒ると手が付けられないって」

「そうですか…… ミミ、あとで話しあるから。 今日はお母さんがおやつ用意してあるから食べてね」

「ニャン吉さん、わたしがお母さんです。 ミミがお世話になってます」

ミミが「ねぇピリカ、お母さんなんて言ってるの?」

「ニャン吉さん、わたしがお母さんで、ミミがお世話になってます。 ありがとうって言ったの」

ミミが「さすがお母さん。 ピリカもこういう言い方出来ないのかなあ?」

「あのね!」ピリカは少しむかついていた。

ニャン吉が「ミミの家、面白いね、ぼくらの言葉がわかるって最高!」

ミミが「そうでもないよ。 お母さんは優しいけどピリカは……」

「ミミ、なんだって! 最後までいってみなよ」

ミミが「お母さんこれ美味しいね! わたしの場合、沢山食べなくっちゃならないから」

ピリカはすかさず「何だって? あんたもしかしてお腹に赤ちゃん……?」

「みゃ」そのまま二匹は消えた。
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