恋は、秘密主義につき。
一実ちゃんといる時はたまにあることなので、彼(彼女)がチラッと一瞥して愛想笑いであしらいの言葉を口にした。

「あー、ゴメンナサーイ。女子会だからまた今度ねー」

「それも楽しそうだけど、みんなで行くと安くて美味しい店、知ってんだ。俺たち大学生であんまり高い店行けないし、ボランティアと思ってゴハンだけでも付き合ってくれると、ウレシイんだけど」

三人は、建物を背にしている私達の行く手を塞ぐように前に並んで立ち、爽やかに愛嬌を振り撒く。

茶髪だったり、メッシュを入れていたり、いかにも遊び慣れてます的な今どきの男の子。声を掛けてきた彼が、その中でも一番見栄えのする顔立ちをしていた。

「んー、でもこの子、人見知りするから他の女の子あたってー?」

私の腕を取って自分に引き寄せると、一実ちゃんが口許だけで笑ったのが見えた。

「そうなんだ? 大丈夫お姉さん、取って食べたりしないし。オレら、その辺のナンパと違うよ」

見栄えは二番目の男の子が、私に向かって笑いかけてきます。
どの辺のナンパと違うのか、全く分かりません。

2回も断れば、だいたいは引き下がってくれますが、「お姉さんたち、見てて一番カワイかったから残念だよなぁ」と、顔を見合わせながらもどいてくれません。
そろそろ一実ちゃんがキレる頃かなぁと思い、彼(彼女)にさらに躰を寄せて成り行きを見守っていたら。

「悪いねぇ、お兄ちゃん達。・・・オレの先約なんだわ、ソレ」

「佐瀬さん・・・っ」

男の子達の後ろから、低いハスキーな声がしたのを。
思わずほっとして。一瞬で心の中になにかが灯ったような。
勝手に笑みがほころび、彼の名前が口から弾けていました。


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