恋は、秘密主義につき。
お腹も満たされた頃。サプライズゲストとして、おじさまが気に入っているというお笑い芸人コンビが登場してライブを披露してくれたり。
歌番組でも見かけるミュージカル女優さんが、あの有名なオペラポップ『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』を熱唱してくれた時には、感動のあまり違う世界に飛んでしまいました。
司会者が、終盤には豪華景品がそろったビンゴゲームがあることを予告すれば、会場内が和やかにどよめきます。


「しょうがないから、おじさんに挨拶に行くよ、ミレイ」

しょうがない・・・。
おじさまには到底、聞かせられません。

手を引かれて前の方に進むにつれ、こちらを盗み見るような視線をチラチラと感じますが、ふーちゃんは気にも留めず堂々とした足取りで、ひときわ賑わっている人の輪へと向かいます。

「失礼」

お構いなしに人垣をどかして、お祝いの中心に立つグレーのタキシードを着たおじさまに辿り着くと。
即座に仮面を貼り付けて、アイドル級の笑顔を振り向けました。

「徹おじさん、誕生日おめでとう! 今日はミレイも一緒だよ」

「双葉、レイちゃん、よく来てくれたねぇ。ありがとう!」

「おじさま、ご挨拶が遅くなってごめんなさい。お誕生日おめでとうございます」

「いやいや、一段と可愛らしいドレス姿だなぁ。父さんが、箱に詰めて持って帰るって言い出すんじゃないか?」

「ぼくが見立てたんだから当然ですけど、持って帰られても困るかな」

周りを笑わそうとしてか、わざと大袈裟に冗談めかしたおじさまに、愛想良くニコニコと返していますけれど。
隣りにいる私には手に取るように分かります。・・・見えない暗黒オーラが全開です。

「最後までゆっくりしていきなさい。ここだけの話、ビンゴゲームの景品はわりとすごいぞ?」

悪戯気味に声を潜めるおじさま。

「へぇ、楽しみだねミレイ」

「そ、そうですね~」

いっそう黒くなった笑顔に合わせ、引き攣りそうになるのを堪えて私も微笑み返します。

「二人とも立樹と力を合わせて、これからも我が社を盛り立ててくれ。兄さん姉さん達にも宜しくな。後で俺からも連絡するから」

『はい』

締めくくりは社長らしく威厳を込めて。
二人の声がそろい、にこやかに挨拶を終えてその場を離れる。
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