そのままの君が好き〜その恋の行方〜
こうして、青春真っ盛りの後輩達と汗を流していると、嫌なことも忘れられ、時間はあっという間に過ぎていってしまう。


やはりここが俺の原点であり、俺はやっぱり野球が好きなんだと改めて実感する日々。


ひたむきにボールを追いかけている後輩の姿を見るにつけ、俺も負けちゃいられないと、力をもらう。


つい、楽しくて、練習に毎日のように、顔を出してしまうのだが


「先輩、いつまでもプータローじゃ、ヤバいっすよ。」


なんて後輩にからかわれ


「うるさい!」


と言い返しながらも、本当はその通りだと、思いを新たにする。


たった3年足らずの経験しかないが、俺にはやっぱり営業職しかないと思っているので、その方向で求職を続けているが、なかなかうまくはいかない。とりあえず何でもいいと、選り好みをしなけりゃ、いいのだろうが・・・。


この日も面接を受けてみたが、手応えがなく、虚しく引き上げて来て、少し遅めの昼食を摂っていると、携帯が鳴った。誰かと思えば、井口だ。


「もしもし、どうした?」


『すいません、先輩。ちょっと教えて欲しいんですが・・・。』


実は、たまにこうやってSOSが入る。俺だって、新人の時、いきなり金澤さんに抜けられたら、たまったもんじゃなかったろう。


金澤さんが言い残して行ったバトンつなぎは、三嶋は他部署に去り、井口にはキチンとバトンを繋ぐ前に、俺がすっ転んで退場して、レースはリタイアで終わってしまった。


もう部外者となった俺が、あれこれ口を出すことは、決して好ましいことじゃないことくらいはわかってはいるが、頼られた以上は、キチンと対応するのが、せめてもの井口への罪滅ぼしのつもりだ。


あれこれと指示めいたことを言ってしまったが、そこは許してもらうことにして、しばらく話をすると、井口は恐縮したように電話を切った。


会社を辞めたことを後悔するつもりはないが、井口には可哀想なことをしたなという思いは強い。だけど、今の俺には、そんなヤツに「頑張れ」というエールを送ってやることしか、もう出来ない。


昼食を終えた俺は、ハローワークに回った。ここに定期的に通うようになって、俺と同じくらいの年代の連中が、男女問わずに多いことに驚いている。


この日も、やはり同年代の女性が、相談カウンターに座っていたが、相談を受けている人も同年代の女性であることに気付いた俺は、思わず桜井さんを思い出していた。


彼女が相談員を務めてる姿を、実際に見たことはないが、きっとあんな感じで、真摯に応対してたんだろうな。


ふと、そんなことを考えてしまっていた。
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