そのままの君が好き〜その恋の行方〜
翌日、出勤すると、なにやらヒソヒソ話が聞こえて来た。


「近藤さん、今回の出張、急遽他の人と交代したらしいよ。」


「何日か欠勤してたみたいだし、どうも様子がおかしいな。」


「向こうの課長と深刻な顔で、別室で話してたのを見た人がいるからな。」


かつての同僚のことだけあって、関心は高いようだった。どうしたのかと課長に尋ねてみたが


「何かあったのは間違いないんだろうが、向こうの課長も何も言わないし、もう直属の部下じゃないから、本人に問いただすわけにもいかんからな。」


そう心配そうに言うだけで、やはり事情は掴んでいないようだった。


余計なお節介かもしれないが、先日の元気のなさもあって、どうにも心配で仕方がない。昼休みに、部署を訪ねてみたが、私用で外出しているとのことで会えなかった。やはり只事とは思えない。


勤務終了後、もう1度訪ねてみたが、既に定時で退庁したという。プライベ-トで何かあったみたいだけど、我々も何も聞いてないと言うのが、部屋にいた人の答えだった。


仕方なく、私は近藤さんにメ-ルを送って来た。同僚時代、メアドを交換していたのだが、プライベ-トなことで、メ-ルするのは初めてだった。


『お疲れ様です、桜井です。何かお困りなことでもありましたか?ウチの課の人達もみんな心配してます。私でお力になれることがあれば、何でも言って下さい。』


差し出がましいとは思ったけど、そんなメ-ルを送ってしまった。しかし返信はなく、私は虚しく帰路に付いた。


夕飯を済ませ、お風呂に入って、部屋に戻った私は、机の上の携帯が光っているのに気づいた。ハッとして見てみると、果たして近藤さんからのメ-ルが来ていた。急いで開封する。


『メールありがとう。みんなに心配かけちゃってるみたいで申し訳ない。これ以上、隠していても、迷惑を掛けるだけなので、明日公表するつもりだったんだけど、実は嫁さんがいなくなった。』


(えっ?)


私は凝然と、その文字を見つめてしまった・・・。
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