Magic ring
ちらりと彼の方を見ると彼は考えていた表情をやめ怪訝な様子でこっちを見た。
「まだそんなこと言ってるのか?この状況で、まだ夢だと思ってるのか?」
「それが分からないから聞いたんでしょ!」
やっぱり、そうなんだ……。
さっきは小さい頃に聞いたおばあちゃんからの話だけを頼りにしてしまったけど、やはりそうらしい。
信じたくない、自分がいた。
「…帰れるように、俺も協力するから」
「…え?」
なんて、まるで私の心の中の、中を読んだように彼はそう言った。
「帰りたいんだろ?顔に出てる。……俺は、キングになりたくてここまで来た。今までずっと努力してきた。
だからリングが授けられた時は物凄く嬉しかった。同時に、当然の結果だと思った。この俺だからな。」
最後の一文で彼は自慢げな顔をこちらに向けながらそう言ったが、私は真面目に聞いていた。彼の話に、引き込まれた。
「今は家に帰りたいって気持ちも無いし、もし俺がお前の立場だったとしても、良いチャンスとして不正してでもここに残る。だって知ってるか?3億人に1人の確率だぜ?ここに来れるのは。
だから、お前の気持ちは分からない。でも力にはなりたいと思ってる。だから今は俺についてきてほしい。」
優しげな表情で、でもすぐに遠くの景色の方を向いて勇ましい顔をした彼の横顔は私をとても安心させた。
「ごめんごめん、ありがと!!優しいところもあるじゃーん!!」