Magic ring
そう言って彼にウインクをすると彼は一瞬心底嫌そうな顔をしてから、バルコニーのフェンスの上に飛び乗った。
「ちょっ、ちょ、なにしてんの!?ごめん!ウインクはもうしないかっ、らっ、ひゃっ!!」
私が焦った声でそう言うと彼は私の手をグイッと引きあげ、……俗に言うお姫様抱っこをした。
「わぁあああ!!何!!今度は!」
「うるさい、動くな。重いから」
「お、重い……!?」
至近距離で緊張する暇もなく、すぐに飛んできたその一言でドキドキとは裏腹に怒りだけが込み上げて来た。
わたしがワナワナと怒りを抑え込んでいると彼は、私の顔を見て、フッと綺麗に笑った。
「嘘だよ、軽いから大丈夫だ」
「……なっ、」
さっきまでしかめっ面しかしてなかったのに突然そんな顔を見せてきて、しかもこんな整った顔に近くでそんな事を言われて赤くならないはずがない。