legal office(法律事務所)に恋の罠
「先程は庇っていただいてありがとうございました」

真っ直ぐに前を向く和奏は、奏の方を向くことなく淡々と謝罪した。

「いえ、私の方こそ和奏さんの事情もわからないのに失礼なことを・・・」

「いえ、奏さんの機転のお陰で宇津井とあれ以上の接触を回避できたのですから、感謝しています」

うっすらと笑顔を浮かべてこちらを向いた和奏の肩を、奏はまたもや衝動的に抱き寄せていた。

「私でよければいつでも利用してくれていい。君の、力になりたいんだ」

突然の申し出に、和奏はしばらくの間、驚いたように奏をジッと見つめていたが、

「ありがとうございます。でも今後は必要ありません」

そう言ってまぶたを閉じてしまった。

「でも、今だけ・・・,少しだけ肩を貸してください」

そう言って俯く和奏の顔は涙を流さずに泣いているように見えた。

彼女の中の闇を明るく照らしたい・・・。

頑なな殻を破って、本当の自分を解放させてあげたい・・・。

でも、今は只、こうして肩を貸してあげることこそが自分に求められている唯一の役割なのだと奏は理解し、自分も和奏の頭にコツンと頭を寄せて、ゆっくりと目を閉じた・・・。

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