legal office(法律事務所)に恋の罠
拘置所に着くと、待ち構えていた直美が、将生との面会の手筈を整えて待っていた。

「和奏、奏さん、こっち」

受付のフロアに、直美の高い声が響く。

職員が一斉に直美の手を振る方向を向いたが、それも一瞬で通常の業務に戻っていた。

さすがは警察署員ということもあるが、

全国でも最大規模のこの拘置所には、犯罪に手を染めた芸能人や有名人が拘留されることも珍しくないため、美形や話題の人物を見慣れている、というのが正直なところだ。

「仲川社長と宇津井弁護士はすでに将生さんに接見しているわ。こっちの会議室で待ってて」

「水谷さん、現在進行形だけど、莉音の件で色々とお世話になった。それに夢谷弁護士を紹介してくれたおかげで莉音も僕も安心して交渉にのぞめたよ」

奏と直美は同じ大学の先輩後輩だ。

しかも、直美の彼氏である香取直泰(かとりなおやす)29歳と桜坂は、大学時代からの親友という。

香取も警視庁のキャリアで、重大な犯罪を取り扱っている。

「和奏、宇津井と関わりを持って大丈夫なの?」

和奏だけに耳打ちするように言った言葉だが、奏の耳にも聞こえる程度の声であった。

和奏と仲の良い直美だから、二人の間に起こった出来事を聞かせてもらっているのだろうか?

「大丈夫。今日この件が終われば、宇津井弁護士は莉音の案件に関わらせないように仲川社長に伝えるから」

話に割り込んできた奏に、直美が顔をしかめた。

「奏さんが知っているということは、あいつ、また何かやらかしたのね」
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