君の笑顔は、俺が絶対守るから。

まだ追いかけてきているのかわからない。

振り返るのも恐ろしくて、とにかく足だけは動かした。


捕まったら何をされるかわからない。

けれど一ノ瀬くんの家が近づいてきて、気が緩んだのか足がもつれた。


「あ……!」


手からスマホがこぼれ落ちる。

派手に転んだ先に、スマホもカシャンとアスファルトに転げ落ちた。


一ノ瀬くんとの通話が……!


慌てて拾おうとしたけれど、後ろから足音がして固まる。


追いつかれた。

やっぱり誰か追いかけてきていた。


これから自分の身に降りかかるだろう悪意を想像して血の気が引いていく。


殴られる? 乱暴される?

刺される? 殺される……?


せめて犯人の顔だけでも。

そう思うのに動けない。


住宅街のど真ん中なんだから、叫べば近くの家から誰か出てきて助けてくれるかもしれないのに、声も出ない。
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