君の笑顔は、俺が絶対守るから。
「ふーんだ。今日は怖い思いしたから、春陽くんに一緒に寝てもらうの!」
「やったー! 僕、梓おねえちゃんのことギュッてしてあげる!」
「ほんと? 嬉しいなあ」
私がでれでれしていると、一ノ瀬くんは頬を引きつらせ「勝手にしろ!」と自分の部屋のドアを開いた。
「けど行き帰りは絶対俺と行動すんだからな! 警察にもひとりになるなって言われただろ!」
「わかってるもん! 一ノ瀬くんのばか!」
べっと舌を出す私に、一ノ瀬くんはものすごく何か言いたそうな顔をしたけど、言葉が思いつかなかったのか、そのまま部屋に入り勢いよくドアをしめた。
そのドアに向かって今度はイーッと歯をむいた私に、春陽くんが不思議そうに首をかしげる。
「梓おねえちゃん。兄ちゃんとケンカしたの?」
「え? ああ、ううん。なんでもないよ。それより、早く寝よっか」
「うん!」
その夜は春陽くんをぎゅっと抱きしめながら眠った。
春陽くんもぎゅっと抱き着いてくれて、なぜか一緒に入ってきたマロもくっついてくれて。
ぽかぽかと温かな子どもと犬の体温に、誰かに追いかけられた恐怖を思い出すことなくぐっすりと眠ることができた。