君の笑顔は、俺が絶対守るから。

私もここを離れるのは寂しいけど、楽しい時間は終わりだ。

明日からは元の日常に戻る。



「一ノ瀬くん」


そっと右手を差し出した。

一ノ瀬くんは黙って、その手を握り返してくれる。


「たくさん、ありがとう。同居相手が一ノ瀬くんで、本当によかった」

「……俺も。お前で良かったよ」


そう言って優しく笑ってくれた一ノ瀬くん。


明日から、朝、彼の天使すぎる寝顔を見ることはできなくなる。

その美しさにうっとりしたり、悶えたりすることもなくなる。


ただ学校で顔を合わせる、同級生というだけの関係に戻るんだ。

秘密の同居は今日でおしまい。



「また、明日ね」

「ああ。学校で」


きゃんきゃんと高い声で吠えるマロと、いつまでも手を振る春陽くんや一ノ瀬くんたちに見送られ、私は1ヶ月ぶりに自分の実家へと帰った。


家に着いて自分の部屋に入ると、安心して力が抜けたけど、同時に胸を乾いた風が吹き抜けていった気がした。



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