月夜の砂漠に一つ星煌めく
そして、先生に頼んでいた訓練も、始まった。

「ハッ!」

「ハッ、ハアッ!」

最近は体を鍛えているハーキムにも、追い付けるようになった。

「そこまで!」

先生に声を掛けられると、剣を収めなければならない。

これは実戦でも、よくある事だと、先生は言っていた。


「王子。腕を上げましたね。」

「先生の、教えのおかげです。」

俺が頭を下げると、先生は私の額を指で、押し上げた。

「下の者に、頭を下げるのは、これからは止めましょう。王子として、不適当かと。」

俺は、逆に言ってやった。

「王子だからこそ、教えて頂いた方に、礼を尽くすべきなのでは?」

すると先生は、大きな声で笑った。

「なるほど。尤もなご意見でございます。」

ハーキムをチラッと見ると、ハーキムも驚いていた。

先生が、こんな大きな声で笑うなんて。


「王子は以前、『私の事は、王子と呼ばなくて結構』と、仰いましたね。」
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