月夜の砂漠に一つ星煌めく
早速宮殿の中に入り、王の間の脇の、長い廊下を抜け、国王の部屋に続く、階段を昇った。

ここには、王族の者と一部の侍従しか入れず、特に王族は、入っても何も言われない。

国王の部屋の前の、廊下を通り、また長い階段を昇ると、そこには広い空間が、広がっていた。

「うわぁ……」

天井はガラス張りになっていて、壁には無数の壁画が、描かれていた。

「素敵ですねぇ……」

「ああ、素敵だなぁ……」

ハーキムと一緒に、ぼーっと見ていると、誰かの足音が聞こえてきた。


「ああ……誰かと思うたら、ジャラールか。」

足音の主は、国王だった。

しかも、侍従を付けずに、お一人で。

「ご機嫌、麗しゅうございます。」

ハーキムは、膝を床に付け、頭を下げた。

「苦しゅうない、ハーキム。ここでは、そのような挨拶は、抜きだ。」

ハーキムと、俺は目を合わせた。

「ここはな。ほとんど誰にも、知られておらぬ。王族だけの隠れ家みたいなモノだ。」
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