月夜の砂漠に一つ星煌めく
国王は中央にある、大きな絨毯に、腰を降ろした。

それを見た俺は、ハーキムに手を伸ばした。

「よい、ハーキム。」

「はい。」

俺の掛け声で、ハーキムが立ち上がると、国王は俺に、手招きをした。


「ここに座ってごらん、ジャラール。ハーキムも。」

国王に言われ、その側にハーキムと共に座った。

「素晴らしいだろう?私の、先々代の王が、星を見る為に、宮殿の天井の部分を、改築したのだ。」

「星を見る為に、ですか?」

「ああ。なんだ、ジャラールは星を見る為に、ここに来たのでは、ないのか?」

「えっ!あ、ああ……そう、ですね。」

まさか月とは言えず、まだ夕方で見えるはずもない星を、探す振りをした。


「そのうち、満天の星空が見える。私がジャラールくらいの時は、覚えたての星を、探すのが何よりも楽しくてな。」

「へえー。」

その時の国王の顔が、子供に戻った表情をしていた。
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