月夜の砂漠に一つ星煌めく
「星を見ていると、何もかも、忘れる事ができる。辛い事も、悲しい事も……」

その時、先生の言葉が、ふと頭を過った。


国王は生まれた時から

逃げる事はできなかった

今も

あなた様がお生まれになった時も



逃げられる事ができない運命を、少しでも忘れようと、していたのかもしれない。

そんな事を考えると、国王が辛い顔で、この空を見上げている姿が、思い浮かんだ。


「父上……」

「どうした?ジャラール。」

「……私が生まれた時も、ここに来たのですか?」

すると国王は、私の頭をそっと、撫でてくれた。

「ジャラール。ここに横になりなさい。」

そう言われ、俺は絨毯の上に、寝そべった。

「何が見える?」

「はい。西の空に沈む太陽。南には薄い月が見えます。そして東の空には、星々……」

「ああ、そうだ。この世の全てが、ここから見える。」

すると国王は、私の隣に仰向けになった。
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