月夜の砂漠に一つ星煌めく
それから俺は、一人星の間に来る事が、多くなった。

夕食も食べ終えて、皆、寝静まった後。

ハーキムにバレないように、こっそり家を出て、国王に分からぬように、足音を忍ばせ、ここで絨毯の上に寝転ぶと、何もかも忘れられるような、気がした。



いづれ

私の全てを受け継ぐこの子に

ここから見える

全ての世界を手に入れる

偉大な男になってほしい



嬉しかったんだ。

あの父上に、そこまで言って貰えて。

ここに寝転ぶと、父と呼んだ国王の、無限の愛情に触れられるような気がして。


その時だった。

カタッと、何かが動く音がした。

「ハーキム?」

ああ、なんだ。

ここに来た事が、バレてしまったかと思い、起き上がって入り口を見た。

だが、誰もそこにはいなかった。

やがて、ギィーッと言う音がして、外からの扉が開いた。

「誰だ!」

剣を持って、扉の向こうに、目を凝らした。
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