月夜の砂漠に一つ星煌めく
するとそのシルエットは、髪の長い女に見えた。

「……すみません。お手洗いの帰りに、星を見ていましたら、道に迷ってしまいました。」

「道に迷ったぐらいで、そこの階段を昇ってくるとは、良い度胸だな。」

外へと通じる階段は、西の敷地の奥に行かねば、その存在も分からぬはず。

宮殿の敷地内に迷いこんでも、なかなか西の敷地の奥までは、辿り着けない。

「本当に、申し訳ありません。直ぐに戻ります。」

クルッと背中を見せたその女は、髪が黄金のように、光ったんだ。


「待て!」

思わず追いかけて、階段を降りようとした時に、彼女の腕を掴んだ。

金髪の髪。

「君は……」

「私の事を、知っているの?」

「ああ。この前、挨拶に来ただろう?」

俺の言葉に、キョトンとしている。

もしかして、俺の顔を覚えていない?


「まあ、いいや。君、星を見に来たんだろう?」

「うん。」

うんって、本当に俺の事、分かってないんだな。
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