月夜の砂漠に一つ星煌めく
「うん、綺麗だ。」

そう言ったのに、俺は星じゃなくて、アリアを見ていた。

金色に光る髪。

白い肌。

整った目鼻立ち。

アラブの女達とは、また違うタイプだ。


「なに?そんなに見つめられたら、穴が開いちゃう。」

「ご、ごめん!」

慌てて反対側を向いた。

「それとも……」

途端に色っぽい声を出して、アリアは後ろから俺を抱き締めた。

「私が欲しいの?」

「はああ?」

可笑しな声を出した俺を、アリアはお腹を抱えて、笑っている。

「嘘よ。ジャラール、奥手そうだもんね。そっちから来るまで、私からは襲わないでおくわ。」

「ええ?奥手って……」


くそっ!

誰にでも、そんな事をするような、軽い男じゃないだけだ!

これでも、好きな女くらいいるんだぞ!

できれば、アリアに叫んでやりたかった。

でも、できなかった。

“好きな女がいる”なんて、アリアに知られたくなかった。

何でなんだろうって、思うけど。
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