月夜の砂漠に一つ星煌めく
ハーキムは、残念そうにため息をついた。

「……図ったな。」

「まさか本気で、踊り子を恋人にするとは、思っておりませんでしたので。」

それを聞いて、ハーキムに背中を向けた。


「ジャラール様。その者をどうするおつもりですか?」

「どうするだと?」

「妃の一人として、お迎えするつもりですか?それとも、遊び女として、お付き合いするつもりですか?」

ハーキムの質問は、この時の俺にしては、難しいものだった。

「……妃に迎えるつもりだと、申したら?」

「お止めになった方が、よろしいかと。」

俺は首を、横に振った。

「まさか、遊び女にしろと言うのか?」

「その方が、まだ納得させられるでしょう。」

「誰にだ。」

「この国の、者達にです。」

急にこめかみが、痛くなった。


恋人を決めるのに、この国の者達を考えなければ、ならないなんて。

「そんな事、聞いておらぬわ。」
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