月夜の砂漠に一つ星煌めく
「それは、ジャラール様がネシャート王女以外の女に、興味を示さなかったからです。」

「ネシャートも、踊り子も、一緒だろ。」

「一緒では、ありません!」

久しぶりに、ハーキムから強い口調を聞いた。

「では、ハーキムは。恋人を作る時に、国の為を思って選ぶのか?」

「恐れながら、私とジャラール様とでは、お立場が違います。」

上手く逃げたハーキムに、初めて舌打ちをした。


「……別れろと言うのか?あの踊り子と。」

「どうするかは、ジャラール様次第です。」

ダメだと言っておきながら、どうするかは俺次第って、勝手過ぎやしないか?

「あの踊り子とは、別れない。」

「ジャラール様!」

「アラブの男は、女を何人でも囲えるのだろう!?ハーキムが言ったのではないか!」

ハーキムは、何も言えず黙ったままだ。

「とにかく、あの踊り子の事は、何も言わないでくれ。」

俺はそう言うと、部屋を出た。
< 122 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop