月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ジャラール王子。」

聞き覚えのある、声がした。

振り返らなくても分かる。

皮肉なものだ。


「お久しぶりに、お目にかかりますね。」

「ああ。元気にしていたか?ネシャート。」

「はい。ジャラール王子も、お元気そうで何よりです。」

コツコツと、足音を立てながら、俺に近づくネシャート。

どうしてだろう。

それだけで、心臓の鼓動が早くなる。


「ジャラール王子……」

切ない声で、俺を呼ぶネシャートに、手を伸ばしてしまいそうになる。

でも無理だ。

ネシャートに、手を伸ばす事は、育ててくれた恩に、背く行為だ。

すると、ふとネシャートが、静かに微笑んだ。

「ネシャート?」

「いいえ、すみません。何だかしばらくお会いしない間に、ジャラール王子が、大人っぽくなられたように見えて……」

その深く、美しい瞳で見つめられると、ドキッとして顔を背けてしまった。
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