月夜の砂漠に一つ星煌めく
「なぜ、黙っていた?ハーキム。」

「申し訳ありません。」

ハーキムは、直ぐに頭を下げた。

「この国の王子として、日々鍛練に精を出すジャラール様を見ていますと、言い出す事ができませんでした。」

「そう……か……」

ハーキムは、俺が“何でそんな話に、なっているんだ!!”と、怒るのだと思っていたんだろう。

でも、結果は逆だった。

騒がないと、ハーキムに約束したからではない。


ああ、そうか。

俺は、他国に行かせられるのかと思うと、これまで頑張ってきた事が、全部無駄のように思えて、力が抜けていくようだったんだ。

他国に行くのなら、この国の決まり事など、勉強する必要はないじゃないか。

他国に行くのなら、この国の兵士を動かすだけの、剣術の訓練など、必要ないじゃないか。

俺は、だんだん可笑しくなって、小さく鼻で笑っていた。


「ジャラール様?」

「有り難う、ハーキム。話してくれて。」
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